4M変更とは?不具合品流出を防ぐためのマネジメント手法を解説

人命に関わる部品を数多く扱う自動車産業において、品質(Q)は企業の生命線です。しかし、昨今の激しいコスト競争の中で、原価低減(C)安定調達(D)の同時達成がサプライヤーの生き残り条件となっています。この難しい課題を解決する鍵が、製造プロセスの根幹を支える「4M変更管理」の戦略的運用です。

本記事では、品質管理の基本である4M変更の定義からデータプラットフォームを活用して、いかに品質を犠牲にせず攻めの4M変更を実現し、競争優位性を確立するかを解説します。

 

品質を守るフレームワーク:「4M」とは何か?

まず4Mがどのような概念なのか、その基本的な考え方と重要性について解説します。また、従来のコスト管理と何が違うのかを理解することが、第一歩となります。

4Mの基本要素

4Mとは、製造プロセスの品質に影響を与える以下4つの基本要素の頭文字をとったフレームワークであり、製造現場における品質管理、生産性向上、トラブルシューティングの基本となる概念です。

 

単語要素定義自動車部品での典型例
Man作業者、技能、配置、
教育 
溶接工の資格、検査員の習熟度、要員交代 
Machine機械・設備生産設備、金型、治具 CNC加工機、
プレス金型、検査装置
Material材料原材料、部品、ロット差鋼板、樹脂ペレット、
接着剤
Method方法作業手順、加工条件、
検査基準
トルク条件変更、
熱処理の温度・時間

図表は弊社で作成

4M変更管理の目的は上記の4要素に変更を加える際、その変更が品質に悪影響を及ぼさないことを事前に検証、承認、記録することです。中でも重要なのは、不具合の未然防止と変更の履歴を追跡できるトレーサビリティの確保です。

自動車部品の調達購買において、4M変更は製品の品質や性能、安定供給に直結する重大なリスクです。そのため購買部門がこの変更管理に深く関わる理由は、不良品の発生や市場クレームを未然に防ぐために他なりません。

サプライヤー側からの材料変更・工程変更の申し出に対し図面・試験データ・工程能力などのエビデンスを基に事前に厳格な審査・承認を行うことで、納入部品の品質を保証し、サプライチェーン全体の健全性を維持するプロセスが「4M変更管理」です。

 

4M変更の遅れは直ちに「調達リスク」へ

変化点管理の分類とマネジメント

サプライヤーの工程や材料に発生する予期せぬ変化は、突如として不良や遅延を引き起こします。このリスクを最小化するための羅針盤となるのが「変化点管理」です。変化点管理を効果的に行うには、発生タイミング(既知/突発)と根本的な起因(人起因/設計起因)の2軸で変化点を整理することで、サプライヤーの変化点を多角的に把握し、より強固で安定したサプライチェーンの構築が可能になります。

発生タイミングによる分類(供給安定性の視点)

(1) 既知項目(計画的な変化)
あらかじめ発生が分かっており、事前の評価や承認プロセスが必要な変化点です。

 

代表的な例

・サプライヤー工場の移管・ライン移設

・原材料グレードの変更、サプライヤー変更

・新しい下請け業者の使用開始

・仕様書の改訂、重要治具の新規導入
など

 

対策の要点

・変更管理手続き(MOC:Management of Change)に基づき、影響評価・サンプリング・承認を徹底

・切り替え前に在庫リスク・品質リスクを洗い出し、必要に応じて段階的切替や並行生産を検討

(2) 突発項目(非計画的な変化)
発生時期を予測できず、即時対応が求められる変化点です。

 

代表的な例

・納入ロットでの突発的な不良多発

・重要設備の故障による生産停止

・サプライヤーキーマンの突然の離任・退職

など

 

対策の要点

・発生直後に原因究明と応急処置を指示

・在庫状況・顧客納期を確認し、代替品・代替ルートの検討を並行して進める

・再発防止策が「4M変更」として標準に落とし込まれているか確認

■根本的な起因による分類(品質リスクの視点)
品質不良・トラブルを、「人」の行動に起因するものと、「製品設計・工程設計」に起因するものに分けて考えます。

(1) 標準の不遵守(人起因)

トラブルの原因がサプライヤー側の「人」の行動にある場合です。

 

代表的な例

・知識不足・スキル不足

・意図的な標準逸脱・手順省略

・連絡ミスによる誤った材料・条件の使用

など

 

対応の要点

・変更管理手続き(MOC:Management of Change)に基づき、影響評価・サンプリング・承認を徹底

・切り替え前に在庫リスク・品質リスクを洗い出し、必要に応じて段階的切替や並行生産を検討

 

(2) 標準の遵守(製品設計・工程設計起因)
標準や仕様書通りに作業したにもかかわらず不良が発生した場合で、原因は「設計・システム」の側にあります。

 

代表的な例

・製品仕様書の公差設定が不適切

・標準作業手順書の記載漏れ

・工程能力を超える無理な設計要求

など

 

対応の要点

設計部門・品質保証部門と連携した仕様書の見直し

・FMEA(故障モード影響解析)等による未然防止策の強化

・「問題のあった図面・仕様」を放置せず、必ず再検討する仕組みの構築

 

「人の行動 × 変化有無」で根本原因を深掘りする

さらに一歩進んだ品質管理を目指す場合は、変化点だけでなく「変化していない部分(慣れや放置)」に潜むマネジメントの弱さにも目を向ける事も有効です。そのための分析手法として広く知られるのが「3H」であり、これを前述の「4M」と組み合わせることも手段の1つです。

・3H(変化点)とは

3Hとは、トラブル発生のリスクが高まる「3つのタイミング」の頭文字をとったものです

 
 
  • ・初めて (Hajimete):新規の作業、初めての担当者など

  • ・変更 (Henkou):手順、設備、設計などの変更

  • ・久しぶり (Hisashiburi):長期間行っていなかった作業の再開など

 

類似の不良やトラブルの再発を防止するためには、個別の事象分析だけでなく、これらの「3H」に着目した分析が有効であるとされています 品質トラブルの低減には(初めて・変更・久しぶり)」による変化点管理を徹底し、4Mのどこにリスクが潜んでいるかを可視化することが重要です。

参考:変更・変化に着目した品質不良・トラブルの分析・対策方法の提案
中央大学大学院 研究年報 理工学研究科編  第45号(2015)経営システム工学専攻 渡辺 慎

戦略的4M管理で競争優位性を確立する

自動車部品の4M変更管理は、「時間と工数」が最大のボトルネックとなり、QCD達成を阻害する要因にも当てはまります。

一般的には調達、設計、品質保証、製造、顧客(OEM)など複数部門を跨ぐ承認が必要ですが、関連データ(図面、品質試験結果、原価データ)が部門ごとに分散しているため、申請・承認プロセスに多大な工数と時間を要します。

プロセスの一元化とリードタイムの劇的短縮

これらの構造的な課題を解決し、「安定調達」と「原価低減」を両立させるカギは、見積書や図面といった調達業務に関する情報を一元管理できる仕組みが必要です。

データをいつでも活用できるように調達データプラットフォーム上で実行することで、品質リスクを最小化しながらコストダウンに繋がる変更(特にMaterial変更)を最速で実現し、プロセスを自動化・可視化することが可能です。また過去の蓄積データや他拠点の調達状況を比較することで、効率的かつ正確な分析が可能となり、調達業務の精度が格段に向上します。
それぞれどのタイミングで変化が起こるか(変化点が発生するか?)をチェックして、変化点が発生したタイミングで起こりうる品質トラブルを早期に発見します。

 

〈関連リンク〉調達データプラットフォーム「UPCYCLE」

まとめ

4M変更管理は、単なるリスク回避のための「守りの活動」ではありません。それは、デジタルによる「可視化」「自動化」「分析」を行うことで、品質(Q)を犠牲にせず、コスト(C)を削減し、納期(D)を安定させるという企業成長のための「未来への投資」です

この戦略的アプローチを確立することで、自動車部品メーカーとしての揺るぎない信頼と責任の証を示し、競争優位性を確立しましょう。

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A1A編集部
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