グリーン調達とは?調達購買担当者が知っておくべき内容をわかりやすく解説

近年、環境意識の高まりやESG投資の拡大により、さらに自動車業界を中心としたEVシフトの加速により、グリーン調達の重要性が急速に増しています。調達購買担当者にとって、環境規制への対応はもはやリスク管理の一環ではなく、企業の競争力を左右する戦略的な優先事項です。

本記事では、グリーン調達の基本概念から、策定すべき「基準」、そして持続可能なサプライチェーンを構築するための具体的なアクションプランまで、実務に即して分かりやすく解説します。

グリーン調達とは?

グリーン調達とは、環境負荷の少ない製品やサービスを提供しているサプライヤーから、優先的に調達する取り組みです。環境保全への意識が高まる中、多くの企業が事業戦略の一環として導入しています。

 

本取り組みの核心は、環境負荷の劇的な低減と持続可能な社会への貢献にあります。企業が環境価値を重視した製品・サービスを選択することは、サプライヤーの環境経営を強力に後押しし、ひいては産業全体の意識変革へと繋がります。また、厳格化する環境規制へ即応し、企業の社会的責任(CSR)を完遂する事も重要な目的です。

調達部門が担うべき「使命」

次世代の調達部門には、従来の資材確保という枠組みを凌駕し、自社のカーボンニュートラル実現を牽引する主導的な役割が不可欠です。サプライヤーの環境対応を促し、パートナーシップに基づく共創を推進することは、CSRの履行に留まらず、長期的な供給継続性を担保するための「攻めの調達戦略」に他なりません。

例えば、自動車メーカーが部品を調達する際に、環境基準を満たしたサプライヤーを優先するケースがあります。リサイクル素材を使用した部品や、省エネルギー技術を活用した製品を選ぶことで、製造工程のCO2排出量の削減が可能です。また、IT企業がデータセンターの電力を再生可能エネルギーに切り替えて、環境負荷の低減を実現する取り組みも進んでいます。

グリーン調達は、企業が環境への責任を果たしながら持続可能な経営を実現するための重要な戦略です。サプライヤーにとっても、環境基準を満たすことで競争力が向上し、新たなビジネスチャンスが生まれます。

なぜ今、グリーン調達が不可欠なのか?:加速するEVシフトと規制

グリーン調達が求められる背景には、投資家からのESG評価や国際的な環境規制の強化がありますが、実務において最も影響が大きいのは産業構造の劇的な変化です。

自動車業界のEVシフトとサプライチェーンの変容

例えば自動車業界では、EV(電気自動車)シフトに伴い、調達品目が従来のエンジン部品からバッテリーや電子部品へと大きく様変わりしています。EVはその走行時だけでなく、製造工程におけるCO2排出量(ライフサイクル・アセスメント:LCA)の削減が強く求められます。

このような動きは、自動車業界に留まらず、あらゆる製造業において「原材料の採掘から廃棄に至るまで」の環境負荷を管理する必然性を生んでいます。環境対応が不十分なサプライヤーは、将来的にバリューチェーンから排除されるリスクを抱えているのが現状です。

より詳しく知りたい方は、グリーン調達の使命:自動車EVシフトによる調達部門への影響を解説をご覧ください。

ESG投資の拡大

ESG投資は、企業の財務情報だけでなく、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つの要素を考慮した投資手法です。企業は持続可能性を示し、社会的責任を果たしながら経済的利益を追求することが求められます。

ESG投資の拡大により、投資家は温室効果ガスの削減や持続可能な資源利用に取り組む企業へ投資を強化しています。この動きは特に欧州で加速しており、世界的な投資トレンドのひとつです。

出典:MRI三菱総合研究所

上図が示す通り、世界の地域別ESG投資額は、2015年と比較して2021年に大きく増加しており、投資額は数倍以上に成長しました。特に欧州、アジア太平洋、北米では「グリーン投資」の割合が大きく増加しています。このような背景から、企業はグリーン調達を推進し、環境に配慮したサプライチェーンの構築が求められています。

 

ESG投資は投資家からの評価に直結する要素であり、競争力を維持するために環境負荷の低減が不可欠です。今後の企業経営では、ESG視点を取り入れた調達戦略の重要性がさらに高まるでしょう。

 

リスクの回避

企業が直面する環境規制の強化や評判リスクを回避するために、グリーン調達は不可欠です。環境負荷の高い調達を続ける企業は、法的リスクやブランド価値の低下に直面する可能性があります。

 

近年、各国で環境規制が強化され、企業の環境対応がより厳しく求められています。例えば、温室効果ガスの排出制限、廃棄物処理基準の厳格化、有害物質の使用禁止などが挙げられます。これらの規制に違反すれば、罰則や事業停止のリスクが発生し、企業の存続にも影響を及ぼしかねません。

 

欧州では、「カーボンニュートラル」達成に向けた規制が進んでいます。違反した企業には罰則が科されるだけでなく、市場からの排除もあり得ます。また、消費者の環境意識が高い市場では、環境負荷の高い製品を提供する企業が不買運動の対象になるケースも増えています。さらに、ESG投資の拡大により、環境対応の遅れた企業は投資対象から外されるリスクも高まるでしょう。

 

このような背景から、グリーン調達は持続可能な経営を実現するために重要な取り組みです。環境規制の強化や消費者意識の変化を踏まえ、環境に配慮した調達戦略を導入することが、企業の競争力維持の鍵となります。

 

グリーン調達の4つのメリット

グリーン調達を導入することで、企業には主に4つのメリットがあります。

・リスク回避

・付加価値の拡大

・取引や事業の拡大

・ステークホルダーからの評価向上

それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

 

リスク回避

グリーン調達の導入により、企業は環境規制の強化や社会的信用の低下といったリスクを回避できます。特に、化学物質や排出ガスに関する規制が厳しくなる中で、適切な調達基準の設定が重要です。

 

近年、各国で環境規制が強化されています。例えば、欧州では RoHS指令REACH規則により、製品に含まれる化学物質の管理が厳格化されています。日本国内でも水質汚濁防止法や大気汚染防止法に基づく規制が強まり、企業はより厳格な基準を遵守しなければなりません。これらの規制に違反すると罰金の支払いや事業停止のリスクが生じます。

 

例えば富士通株式会社は、「グリーン調達基準」を策定し、環境負荷の低い材料や部品を優先的に調達する企業のひとつです。この基準により、サプライチェーン全体で環境負荷の削減と、法規制への柔軟な対応を可能にしています。具体的には、調達先の環境管理体制を厳格に審査し、化学物質の含有状況を事前に把握することで、環境リスクの最小化を実現しています。

グリーン調達の推進は、法規制への迅速な適応や、取引先・投資家からの信頼向上につながります。環境リスクの管理体制を強化し、持続可能な経営を目指しましょう。

 

製品付加価値の向上と新規市場の獲得

グリーン調達を推進することで、企業は製品やサービスの付加価値を向上できます。環境負荷の軽減に加え、売上の拡大やコスト削減も大きなメリットです。

 

サプライヤーが環境経営を実践し、事業機会の獲得とリスク回避を意識することで、付加価値の向上と環境負荷の削減を同時に実現できます。例えば、資源・エネルギーの使用削減はコスト削減につながり、資源制約への対応も可能です。

 

このようにグリーン調達は、企業の競争力向上にも貢献します。環境配慮型の商品やサービスは、消費者や取引先の評価を高め、新たな市場機会の創出につながります。

取引や事業の拡大

グリーン調達の推進により、企業は取引先との関係を強化し、新たな事業機会を創出できます。環境経営の実践は、事業の拡大とリスクの軽減を同時に実現する手段のひとつです。

環境問題への対応は、企業間取引の重要な基準となっています。取引先の選定では、環境に配慮した経営方針が求められる傾向が高まっています。また、バリューチェーン全体で持続可能なサプライチェーンを構築することで、事業の拡大につなげることも可能です。

旭化成グループは、グリーン調達の推進を通じて取引先との信頼を深め、新たな事業機会を創出しています。同社は、環境負荷の低減を目指し、サプライヤーと協力しながら環境配慮型製品の開発や生産プロセスの改善に取り組んでいる事例です。このような取り組みは、企業価値の向上と持続可能な成長につながります。

グリーン調達は企業の成長戦略において不可欠な要素です。持続可能な経営を目指す企業にとって、取引先との信頼関係を強化し、新たな市場機会を開拓する重要な施策となります。

資金調達の円滑化と企業価値の向上

グリーン調達は、投資家、消費者、取引先などのステークホルダーからの評価向上がメリットのひとつです。環境配慮型の企業活動は、社会的責任を果たすだけでなく、企業価値の向上や競争優位性を確保できます。

ESG投資の拡大により、企業の環境対応は投資家の重要な判断要素です。また、消費者の環境意識も高まり、環境配慮型の企業は市場での競争力を強化できます。こうした変化に対応するため、企業は環境負荷を低減しながら事業の持続可能性の向上が不可欠です。

金属加工機械を製造するアマダグループでは、調達品やサプライヤーの評価基準に環境要素を組み込み、グリーン調達を推進しています。同社が調達先を評価する基準は、以下の通りです。

 

〈アマダグループの調達先評価基準〉

・品質

・価格

・納期

・サービス

・環境保全活動への取り組み

・含有化学物質の管理

 

この取り組みにより、ステークホルダーからの信頼を獲得し、企業価値の向上を実現しています。

グリーン調達の推進は、企業の持続可能な成長と競争力の強化に貢献します。社会的責任を果たしつつ、投資家や取引先からの評価を高めることが、成長戦略の重要な要素となります。

グリーン調達を成功させる「3ステップ」の実践方法

グリーン調達の実効性を担保するためには、調達基準の策定、段階的な適用とサプライヤーへの指導、そして社会情勢に応じた定期的な基準の見直しという一連のプロセスが不可欠です。このマネジメントサイクルを確立することにより、法規制の遵守と環境負荷の低減を両立した、持続可能なサプライチェーンの構築が可能となります。

以下に、基本概念を実務レベルへ落とし込み、具体的な施策として推進するための3つのアクションプランを提示します。

ステップ1:グリーン調達基準の策定と可視化

まず、自社がサプライヤーに求める環境基準を具体化し、マニュアルとして文書化します。

例として、

・企業の環境マネジメントシステム(ISO14001等)の取得状況
・使用禁止物質・制限物質の管理体制(RoHS/REACH対応)
・CO2排出量データの提供可否と削減目標の有無

自社の環境方針を明確にし、調達基準を精緻に文書化することは極めて重要です。確固たる基準を設けることで、社内外における統一的なルールの運用が可能となり、サプライヤーに対しても目指すべき明確な指針を提示できます。

ステップ2:サプライヤーとのコミュニケーションと支援

基準の達成にあたっては、一方的な要求にとどまらず、パートナーシップに基づく双方向のアプローチを実践することが不可欠です。代表例としては、


・方針説明会の開催:自社の環境方針およびグリーン調達が担う「使命」の共有
・共同改善プロジェクトの推進:省エネ技術の導入や代替素材への転換に関する共同検討

が有効的な手法の1つです。

 

ステップ3:継続的なモニタリングと基準のブラッシュアップ

サプライヤーの環境対応レベルには差があるので、段階的に実施と適切な指導が求められます。例えば、以下のようなステップで進めると効果的です。

・コンプライアンス関連の要求

・環境マネジメントシステム(EMS)の構築要請

・環境負荷低減のための具体的な取り組みの推奨

各項目を段階的に導入することで、スムーズな適応を促せます。

 

グリーン調達基準:実務を支える構成の最適解

グリーン調達の取り組みを実務レベルで定着させるためには、発注企業が揺るぎない「評価基準」を言語化し、サプライヤーへ共通言語として浸透させることが肝要です。調達業務の指針となる環境省の「グリーン調達推進ガイドライン」では、実効性を担保するための具体的な枠組みが示されています。

出典:環境省「グリーン調達推進ガイドライン」をもとに作成

本ガイドラインの骨子を紐解くと、グリーン調達基準を構成すべき必須要素は、サプライチェーン全体での運用実効性を高めるべく、主に4つの領域に体系化されています。 

    1. バリューチェーンマネジメントの必要性

グリーン調達の完遂には、自社のみならずサプライチェーン全体を俯瞰した環境管理が不可欠です。サプライヤーに対して環境経営の重要性を浸透させ、上流工程から廃棄に至る全プロセスで環境負荷低減を共創する姿勢が求められます。特に原材料調達の段階における抜本的な取り組みは、持続可能性を左右する鍵となります。

    1. 環境方針の明文化と共有

企業の環境理念や具体的方針をマニュアルに明記することで、サプライヤーは目指すべき基準を正確に捕捉し、迅速な対応が可能になります。例えば、具体的なCO2排出削減目標や持続可能な資源活用の指針を提示すれば、社内外で統一されたルールに基づく「攻めの環境対応」へと繋がります。

    1. グリーン調達の考え方と適用範囲

対象となる調達品目や適用範囲を明確に定義することは、環境ガバナンスの徹底に直結します。一例として、電子機器分野では有害化学物質の厳格な排除や、環境負荷の低い代替素材への転換を必須基準として定めることで、製品全体の環境価値を担保しています。

    1. 定量的な評価基準の確立

基準の透明性を確保するため、環境省の「環境経営の評価チェックリスト」を活用した定量的なスコアリングが有効です。これにより、サプライヤーの取り組み状況を可視化し、公正な評価に基づいた持続可能なパートナーシップを構築することが可能となります。

 

実効性を持つグリーン調達基準の運用には、明確な環境方針から具体的な評価指標に至るまでの要素を体系的に組み込むことが不可欠です。サプライヤーとの緊密なパートナーシップを構築し、バリューチェーン全体における環境面での競争力を高めながら、持続可能な未来に向けて共に歩みを進めてまいりましょう。

まとめ:持続可能な未来を創る調達へ

グリーン調達の推進は、単なる環境負荷の抑制に留まらず、企業の競争力を左右しリスクを最小化するための戦略です。ESG投資の隆盛や国際的な環境規制の厳格化を背景に、持続可能なサプライチェーンを構築し、ステークホルダーからの確固たる信頼を勝ち取ることが強く求められています。今こそ自社の調達戦略を抜本的に再考し、環境価値を組み込んだ施策を断行することで、永続的な成長基盤を確立していきましょう。

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A1A編集部
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