見積査定とは?調達・購買業務における査定の方法やプロセスの全体像を解説

調達購買業務における見積査定は、適正価格の設定や品質確保、企業の競争力向上に不可欠なプロセスです。サプライヤーから提出された見積書の価格や条件を精査し、適正な取引を実現するために、査定の手法やプロセスを理解することが重要です。本記事では、査定の基本的な進め方、価格の評価基準、交渉ポイントなど、調達・購買業務における査定の全体像を分かりやすく解説します。

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「見積査定」とは

見積査定とは、調達・購買担当者がサプライヤーから提出された見積書の内容を精査し、適正価格かどうかを判断するプロセスです。調達・購買部門にとって、コスト削減や品質確保の観点から重要な業務の一つです。

 

査定では、材質・加工工程・工数・品質・納期などを基に、価格の妥当性を評価します。適正な見積査定を行うことで、企業の競争力向上やコストの適正化につながります。

見積査定の意味

見積査定は、調達・購買担当者が適正価格で製品を調達するための重要なプロセスです。単にコスト削減を目的とするのではなく、サプライヤーにとっても適正な利益を確保し、健全な取引関係を構築するために不可欠です。

 

適正価格での査定を通じて、公正かつ合理的な取引を実現し、双方にとってメリットのある契約を締結することが求められます。そのため調達・購買担当者には、価格の妥当性を判断するスキルを持ち、品質や納期といった価格だけにとらわれない総合的な判断力と交渉力が必要とされます。

見積とは

見積とは、契約合意に必要な価格や条件が記載された書面やデータを指します。サプライヤーの営業が時間をかけて作成する見積書は様々な思惑が入っており、サプライヤーの経営状態を左右する重要なものです。

 

サプライヤーから提出される見積書の価格はあくまで見積値であり、サプライヤーの原価そのものではありません。利益を得るために原価より高い項目もあれば、競合他社に勝つために原価より低く設定している項目もあります。調達購買担当者は、その価格が妥当であるか、材質・加工工程・工数・品質・納期などの観点から査定を行い、適正な価格交渉を実施する必要があるため、価格の妥当性を見極めるスキルが問われます。

 

サプライヤーの営業担当は1円でも高く売りたい反面、調達は安く買いたい。調達購買担当者は、自分が営業担当ならどうするか?の視点で考えながら、幅広い製品知識や交渉テクニックを駆使して調達に有利な条件での合意を目指すこととなります。

見積査定のステップ

見積査定のステップを図式化すると、下記図のように複数のステップを経て進められることがわかります。

見積査定プロセスの全体像

見積もりのパターン

見積もりには様々な目的があり、初期段階の検討から発注先選定のためのもの、量産品の変更など、その目的に応じた適切な対応を行う必要があります。

    1. 新規部品 検討段階
      1. 製品化未決定の段階での見積。
      2. 候補サプライヤーを選定するが、価格合意までは行わない。
      3. 製品化が決定した場合、この段階の条件がベースとなるため慎重に確認。

    2. 新規部品 サプライヤー選定
      1. 企画段階から選定フェーズを経てサプライヤーを決定。
      2. 複数社に見積依頼を出すため、時間を要する。
      3. 価格合意がバイヤーの腕の見せ所となる。
      4. 発注量がサプライヤーの経営状態を左右するため慎重な判断が必要。

    3. 設計変更
      1. 量産品の設計変更時の見積。
      2. 既存のサプライヤーに依頼するため、比較的簡単なケースが多い。

    4. 市況変動対応
      1. 材料建値や為替の変動を量産価格に織り込むために行う見積。
      2. サプライヤーからの値上げ申請もあり、慎重な対応が求められる。

1.見積依頼

依頼元(自社の開発や原価企画)の情報をもとに、サプライヤーに見積依頼をかけます。

a. 情報提供

サプライヤーが見積を実施可能な情報(図面や数量等)を提供する必要があります。情報が不足していては依頼をかけることはできず、もし前提条件が大きく異なる場合、サプライヤーは見積をやり直すこととなります。また、提出物も全てリスト化し依頼する必要があります。

 

b. 候補サプライヤー選定

図面や数量から対応可能な候補サプライヤーを選定します。これには製品やサプライヤーに関する知識が必要となります。例えば図面から判断し、順送プレス300tクラスを保有し深絞りの対応が可能なサプライヤーはどこか等。そのためにも保有設備や技術力をまとめたリストは毎年更新する必要があります。

 

c. 見積日程

客先回答もあるため、調達は限られた納期の中で情報提供を迅速に行い、滞りなくサプライヤーに見積もりを進めてもらうことが重要となります。

2. 見積回収

余裕をもって査定を進めるため、納期に間に合うよう見積回収を実施します。

a.催促

納期前には一度、状況確認のための連絡を行い、納期通りの提出を促します。

b.必要資料確認

ここで漏れがあると先に進めないこともあるため、確実に依頼リストと照らし合わせて誤りがないか確認します。

3. 見積内容確認

内容に誤りがあれば査定やサプライヤー比較を実施することができないため、サプライヤーに再見積もりを依頼します。再見積は査定日程に大きく影響するため、見積受領後すぐに内容確認を実施します。

a. 前提条件誤り

図面や品質、数量の前提条件が異なる場合は価格に影響するため、即サプライヤーに差し戻し、再見積を依頼します。

b. 部品や加工費漏れ

構成品不足やあきらかな加工内容漏れもしばしば見受けられます。最終的な価格に大きく影響するため、再度見積を依頼する必要があります。

4. 査定

査定をする際には多くの知識と前準備が必要です。製品や工程、加工方法の知識、適正価格や相場観など、査定は調達の醍醐味の一つです。

a. 製品理解

査定する対象物がどのような製品か、材料、加工方法、工程、工数等、サプライヤーの見積書を見る前にある程度自身で想像がつくレベルまで知識を付けなければ本当の査定は出来ません。サプライヤー営業の身として見積もりを作れるようになれるのが理想です。

 

b. コストテーブル

プレス加工や樹脂成型等、それぞれの加工種類や生産量によって加工コストは変化します。それらをまとめたものがコストテーブルです。見積書を受領したら、まずは過去の同サプライヤーの価格と比べ査定し、異なる場合はその理由も調査します。 

 

参考ブログ:

「コストテーブルとは?コストテーブルの種類や作り方を分かりやすく解説」

「コストテーブルの作り方とは?実例をダウンロード可能なExcelを用いて説明」

 

ダウンロード可能参考資料:

「調達担当者向け 回帰分析型コストテーブル Excelテンプレート」

 

c. 比較

        1. 他社比較
          その名の通り相見積もりで他サプライヤーと比較し最安値の値を査定値とします。

        2. 類似品比較
          過去の類似品を探し出し見積書の内容を比較する方法。同サプライヤーでも他サプライヤーでも可能。但し加工方法や材料、生産量等、条件が合わないと比較出来ないことがあるため、しっかりと比較対象を決める必要があります。

d. 必達目標とチャレンジ目標

調達の必達目標をクリアするために、コストテーブルや比較を駆使し査定案を作成します。また、加工方法や現場を理解した上で現実的なチャレンジ目標を作成し、さらなるコスト削減に挑むのもサプライヤー間の競争を加速させる良い手法です。

5. 交渉

取引相手と価格や条件等で合意をする行為でWin-Winの状態を作り、お互いの利益の最大化を目指します。根拠なき買いたたきはNGであるため注意が必要です。交渉力を磨けば生産性が上がり自社の利益の増大に貢献することとなります。「交渉」を学ぶ機会は少なく製造業では体系化されていません。この交渉を学びスキルを高めていくことが、これからの調達部門に最も求められることの一つです。

a.状況整理とBATNA

まずは現状どのような状況かを整理し、どの程度の査定値を提示するかを熟考します。交渉で合意が成立しない場合の最善の案であるBATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement)をどれだけ強くするかが交渉を有利に進めるポイントとなります。

 

b.査定内容の説明と質問

よく準備した査定内容を細かく論理的に説明し、サプライヤーとよく会話することを意識します。相手の想定質問も可能なかぎり準備し、事前にロールプレイングで練習をしておくことが理想です。

 

c.合意形成

お互いの希望価格や条件をよく汲み取り、BATNAを駆使し合意形成を行います。妥結出来ず歩み寄れない場合はもう一度戦略を考え、再度交渉を行います。


d.合意

しっかりと最終確認を行い、相違や漏れが無ければ合意をします。他サプライヤーとも同時並行で交渉を行っている場合は最終回答をアナウンスし、公平公正な条件で回答をもらうことを心がけましょう。

6. 決裁

サプライヤーと価格合意後、調達内でその価格を決定します。

a. 資料作成

目標値や査定内容、今後のコスト削減アイテム等、サプライヤー間の比較を行い、どのサプライヤーでどの価格にしたいか、自らの意思を示します。

 

b. 承認

決裁者に説明する際は、明瞭簡潔に要点のみを伝えます。

7. 振り返り

見積業務において、振り返りはもっとも重要なプロセスです。ここを飛ばしてしまってはスキルの向上に繋がらず、円滑な調達活動や健全な取引関係の実現を妨げることになりかねません。忙しい時期であっても必ず実施することを意識しましょう。

a. 良い点、悪い点の振り返り

査定を行うプロセスの中で都度メモをとり記録できるのが理想ですが、順を追って思い返してでも振り返りを実施することを心がけます。目標値に対しての査定値がうまく機能した、重要な価格交渉から急に話して失敗した等、細かく振り返りましょう。

 

b. 改善活動と横展

悪い点は必ず対策を考え改善します。良い点は調達内で情報共有し、場合によっては調達部員の前でプレゼンを行い全体のスキルアップを図ります。

まとめ

見積査定プロセスは、調達業務の中で非常に重要な役割を担います。見積査定プロセスを強化することで、適正価格を見極めるスキルが向上し、コスト削減だけでなく企業の競争力向上にも繋がります。

適正価格を見極めるためには、製品や加工方法、材質に関する深い理解が求められます。これにより、過剰なコストを削減し、品質を維持しつつ、競争力のある価格設定が可能となります。定期的な振り返りと改善を行い、より強い調達力を養いましょう。

 

また、価格の整合性を確保しコスト競争力を強化するためには、見積データの蓄積も非常に重要な業務課題となります。

調達購買活動におけるデータ活用の重要性については、こちらをご覧ください。

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A1A編集部
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