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エンジン、農建機、エネルギー、マリン製品等の開発・生産・販売
売上高
単独:1兆814億円(連結:2024年3月末現在 )
購入品目
鋳造部品、金属加工品、樹脂、電装品など
導入前の課題
・AIと人で補完し、より価値の高い業務へシフトする必要があった
・加速度的に増加するバイヤー業務の負担軽減が急務だった
・データの非構造化により、効果的な分析や活用ができていなかった
企業について
―― 御社の事業概要について教えて下さい。
鎌倉様 弊社はディーゼルエンジンを主軸とし、創業100周年を超える企業です。
提供している製品は、BtoB領域が主ですが、農業機械などB2C領域への製品も提供しています。
多岐にわたるお客様と製品群を持ち、主に7つの事業を展開する企業です。
弊社の強みはこの事業の多角性にもあり社会や市場の変化にも柔軟に対応できる体制を築いています。一つの分野だけに依存せず、多角的な事業展開によって、長期的な成長と安定の基盤となっています。
また、事業や部門間の垣根が低い社風も当社の大きな強みです。UPCYCLEの導入においても、事業(グループ会社の意)横断で「課題解決へ向けて、まずはやってみよう」という調整ができましたし、チャレンジ精神が強い企業文化があります。
佃様 組織間連携や、チャレンジ精神が強いという観点では、他社について知人から話を聞くことがありますが、私は弊社の社風は一番なのではないかと思っています。
福永様 私は中途入社ですが、弊社には経験年数に関係なくチャレンジを強く推奨する企業風土が根付いていると感じています。若手社員でも活躍しやすい環境が整っていることは、ヤンマーの大きな強みの一つだと思います。
調達部門について
―― 御社の調達組織とそれぞれのお役割について教えて下さい。
鎌倉様 私はホールディングスの資材部戦略企画グループに所属しています。その他に、グローバル購買を管掌している部署、そして事業横断で効率的な調達を進める集中購買の部署があります。
先ほどご説明した通り、弊社には7つの事業があり、各事業における実務を担うバイヤーは、それぞれの事業部に所属しています。
戦略企画グループの主な役割は、事業横断で、かつ海外も含めた中長期的な戦略を策定し、その実行に向けたアクションを推進していくことです。また、システムインフラストラクチャ関連では、レガシーシステムの開発・維持・メンテナンスといったシステムの維持管理も担っており、この二つが主要な業務となっています。
調達品目については、エンジンが主体ですので、鋳鉄やプレス板金、鋳物、それから挽物類などがメインを占めています。勿論、その他では樹脂や電装品もありますし、業種でいうと100近くの業種を扱っています。このように非常に幅広い領域に関わる製品を取り扱っているため、バイヤーの業務も多岐にわたり、バイヤー冥利に尽きる環境だと思います。
佃様 私は、主に資材部門におけるDX戦略の立案や推進をすることもそうですし、既存の仕組みの維持・メンテナンスについても担当しています。
福永様 私はヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマー建機株式会社の購買部に所属しています。私の担当業務は、ショベルカーを製造するための部品調達で、主にプレス板金や社内加工用の鉄板の購入を担当しています。具体的な業務内容としては、原価低減の推進、調達先の選定、またサプライヤーとのやり取りを行っています。
増大するバイヤー業務の負荷と、データ活用の限界が課題だった
―― 調達業務においてどのような課題があったのでしょうか。
鎌倉様 現在、弊社では次の 5 年間の中期経営戦略を策定している最中です。その中で、当然ながら資材部門としての戦略も検討しています。
これまで、弊社ではシステム導入による様々な改善に取り組んできました。しかし、それらのシステム導入起点の改善がバイヤーの業務負担を本当に軽減したかというと、必ずしもそうではなく、中にはペーパーレス化によって逆にバイヤーの仕事が増えたケースもありました。
中期経営戦略を考えるにあたり、バイヤー業務で対応すべきことは今後さらに増加すると見ています。これまで以上のコスト削減に加え、環境問題、紛争鉱物への対応、コンプライアンス遵守など対応すべき課題が多く、バイヤーの業務は加速度的に増えていきます。このような状況下でトップダウンによる全体最適による改善だけでは、バイヤーの負担を軽減することができないと考えました。やはりボトムアップで、業務を効率化し、ストレスを軽減し、付加価値の低い作業をなくし、本来やるべきことに時間を割いていかなければならないという認識がスタート地点でした。
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しかし、それはどういったことなのか導き出すのもまた容易ではありません。バイヤーの業務を全て洗い出し、何に時間がかかっているかを調べるのが正攻法かもしれませんが、それでは時間ばかりかかって何も進まないことが多いのが実情です。そのため、まずは着手しやすい部分から改善を進めたいと考えました。また、このような取り組み自体がバイヤーの皆さんのモチベーション向上にも繋がればという思いもありました。
そうした背景から、見積比較や見積価格査定といった必ず発生する業務において、デジタルの力を使いながら効率化できることはないか、というのが最初のスタートでした。当初、他社と AI を活用した同様の取り組みを進めていましたが、期待する結果は得られませんでした。その原因は、AI の精度を 100% 信頼しきれないという課題が解決できなかったためです。一度は諦めかけたのですが、その矢先に取引先を通じて AA 社をご紹介いただきました。
AI だけでは信頼しきれない部分を最後は人が見て最終成果物に仕上げる。御社の UPCYCLE はそこをやってくれるという部分が、魅力として大きかったですね。
福永様 実際にお取引先様からいただく見積もりには、材料費、加工費、管理費などが記載されていますが、これまで私たちは主に提示された最終的な価格だけを比較することが中心となっていました。そのため、材料費や加工費がどの程度高いのか、またその背景にある理由についての詳細な分析が十分に行われておらず、一歩踏み込んだ原価低減には至っていないという課題感を常に抱えていました。
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佃様 この取り組みに限らず、普段からお取引先様より PDF や Excel など、様々なフォーマットで見積もりをいただいています。ただ、構造化されたデータではないため、分析や活用など、次のステップに使えないという課題がありました。
そこで別のアプローチとして、我々が作った原価明細見積書フォーマットにお取引先様に入力してもらうこともやっていたのですが、お取引先様にはそれぞれのフォーマットがあり、ヤンマーのためだけに新たなフォーマットを使うというのは、社内決裁などの問題で難しく、なかなか受け入れてもらえませんでした。結果として、活用できるデータを構造化するための有効なアプローチを見つけられずにいました。 そういった中で、先ほど鎌倉が申し上げたように、共同研究で AI を使用したデータ構造化をしようとしましたが、満足いく結果は得られませんでした。そんな時に紹介をいただいたので、まさに求めていたものがあった、と強く感じたのを覚えています。
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グローバル競争の中で勝つためにはデータ分析が不可欠
鎌倉様 市場がそこまで加速度的には伸びていかないようなセグメントもある中で、原価低減活動は容易ではありません。
特に日本市場では、原材料の高騰や為替、労務費の上昇といった要因が大きいです。労務費については、下請け企業の保護という観点から引き上げをせざるを得ない状況が出てきており、ここ数年は値上げばかりでした。これは各社共通の状況だと思います。
価格が上昇基調にあるトレンドの変化がある中で、それでも原価低減をしていこうと思うと、やはりデータをより細かく見ていく必要があります。明細レベルもそうですし、過去の実績と比較して、「労務費はこれくらい上がっているけど、材料費はそこまで上がっていないから、トントンにできるよね」などといった部分を、もっとデータで深掘りできるはずです。
今もある程度は行われていますが、それをしっかり実行しようとすると、ものすごく工数がかかります。そこを、もっと効率化できるはずだと考えています。
福永様 鎌倉が申し上げた通り、値上げ基調が続く中でコスト削減の要因を見つけ出すには、徹底した分析が不可欠だと感じています。
これまで板金部品に関しては VA(Value Analysis)を活用して取り組んできましたが、すでにやり尽くした感があり、新たなアイデアが出にくい状況です。そのため、見積を細かく分解して詳細に分析する手法が求められる時代に突入していると感じています。
AIを活用しながら、人が真に注力すべき業務へシフトしていく
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―― 調達・購買部門に求められる役割とは、どのようなものだとお考えでしょうか。
鎌倉様 基本的に原価低減というのは時代がどう変わろうとも変わらないものだと思っています。難しいのは、価格低減・安定調達・ESG の観点、この三つが常に相反するということです。
これらのバランスをいかに取りながらマネジメントしていくのか。誰も正解は持っていないと思いますが、この三つの視点を見ることのできる部門は購買部門以外にはありません。
この三つの観点をコントロールできる企業こそが、今後も発展し、長く続いていく企業だと考えています。それが資材部門に対する会社からの期待なのではないでしょうか。
いくら我々が独創的な技術を持ち、最先端な製品を作ったとしても、この三つが成立していないと企業は存続し続けることができない。会社から言われているわけではありませんが、それを実現できる、実現すべきなのは、我々購買部門だと勝手に考えています。
―― システム導入にあたり、他のシステムもご検討されたのでしょうか?
佃様 共同研究の後、様々なソリューションを探す中で、毛色は異なりますが、ドキュメントのデータ構造化というアプローチおいては、UiPath の Document Understanding が選択肢の一つとしてありました。
これは AI を活用しドキュメントをデータ化・構造化する機能で、全く別の業務での活用も検討したことがありました。そういったところが比較対象としてはありました。
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取引先フォーマットへの柔軟な対応力と、熱いプレゼンに心を打たれた
―― 最終的にUPCYCLEに決められた際のポイントは何だったのでしょうか。
鎌倉様 繰り返しになるかもしれませんが、AI で 100 点を取れない部分を、最後は人が補正して 100 点のものをUPCYCLE上で出してもらえる、という点が一つ。
もう一つは、前提として、こちらのフォーマットではなく、相手側のフォーマットを構造化できるという部分が決め手だったと思います。
我々は複数事業を展開していますが、年間売上 1 兆円といえども、事業ごとに見ると、そこまで大きくありません。バイイングパワーがとても強いかというと、事業ごとに切り分けてみるとそうでもない。そうなると、なかなか「このフォーマットでやってほしい」という依頼をさせてもらっても取引先には採用してもらえるかはわかりません。
そうすると、いかに相手側のフォーマットをうまく取り込んで、活用できるデータにできるかという視点になります。
UPCYCLE と比較されるサービスは世の中に何社かあると思いますが、それらは基本的な仕組みとして「この定型フォーマットに入れてくださいと依頼して入力してもらう」というものが多いと感じていて、それでは私たちが活用したいデータにならない。そこが大きな差別化要素だと考えています。
佃様 私も同じような感覚です。
あとは、御社のミッションや業界を変えていきたいという熱い思いに心を打たれたということがあるかもしれません。私たちが解決したい課題に一緒に取り組んでいけば面白いことができそうだと感じました。
UPCYCLEに蓄積されたデータが、日本の製造業を盛り上げる一助となることに期待したい
―― UPCYCLEに期待していることについてお聞かせください。
鎌倉様 UPCYCLE に期待していることは、単なる業務の効率化だけではなく、付加価値を上げる部分にも貢献をしてもらいたいということです。
これまでの購買部門は、「下請け的」な仕事が多かったのではないかと思います。原価部門や開発部門からの見積もり依頼に対し、サプライヤーとやり取りして見積もりを回収し、それをそのまま返すだけ、という側面があったことは否めないと思います。
しかし、購買部門の本来の役割は、そこで適切に比較・査定を行い、ベストプライスを導き価格交渉を行うことです。開発部門がサプライヤーを指定する場合でも「こちらの方がこういう理由で安いです」「安定供給が可能です」といった具体的な提案ができるような、「提案型資材部門」へと進化していきたいと考えています。これは次期中期経営計画でも掲げている目標です。
この目標を本当に実現しようとすると、非常に多くの工数が必要となります。そのため、IT のツールとしてのサポートが不可欠であり、それがなければドライブはかかっていかないと思っています。UPCYCLE 導入によって、効率化だけでなく、購買部門全体の付加価値を上げていきたいという意図は当然あります。
あとは投資対効果ですね。そこはどうしても大きな基準になります。正直なところ、それは今後の課題ではありますが、実際に UPCYCLE を使うことによって、効率化の面でどれだけ工数削減効果が出るのか。付加価値の部分はなかなか難しいですが、明細まで分析することによってどれだけ原価低減が実現できたか。そういった部分を積み上げて効果試算をしたときに、投資対効果があれば、活用の幅を広げていけると思います。
福永様 私が期待するのは、人の手によらず、全ての分析された数値が出てくることです。一歩上の原価低減ができ、なお人の手間もかからない、という状態を実現していただきたいです。
例えば、「あるべきコスト」、つまり、こういう仕様の図面で、こういうサプライヤーの設備だったらこのくらいのコストになるはず、といったものが分かると最高だと思っています。
佃様 例えば、複数の見積情報をもとに、明細原価の情報だけでなく、図面情報や過去のメールのやり取りといった情報も AI がすべて読み込んで一部の査定を行ってくれたり、より質の高い見積査定を支援してくれると嬉しいですね。
鎌倉様 御社からのメッセージとして「最高のモノづくりには最高の調達がいる」というメッセージにとても感動したのですが、この日本の調達業界をもっと盛り上げていってほしいです。
UPCYCLEを導入することで、よりデータドリブンな調達活動の実現と、デジタルバイヤーの育成を目指す
―― UPCYCLE導入により、どのような調達組織となっていきたいのか展望をお聞かせください。
福永様 データドリブンな発注先の選定が重要だと考えています。データに基づいて行動できるようになれば、これまで見えていなかった材料費や加工費などの内訳をしっかりと分析することが可能となり、それを基に価格交渉やメーカー選定をより効果的に進められるようになると期待しています。
佃様 目指す将来像の距離感によって違いますが、まず目指したいのは「デジタルバイヤー」です。バイヤーがデジタル技術を使える環境が整い、実際に活用できる状態になることが理想です。 具体的には、AI 技術が進歩するなか、バイヤーのあるべき姿は大きく変わるのではないかと考えています。
現在の業務や知識、判断の一部がどんどんデジタル化され、人が本当にやるべきことが変化していく。そのような変化に適応していかないと、競争に負けていくのだろうなと想像しております。 だからこそ、デジタルを積極的に活用していきたいと思っています。私たちはその環境をしっかりと整え、それを使う側のバイヤー自身もそれを使いこなす、ということをしっかりと根付かせていく必要があると考えています。
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鎌倉様 二人の話をまとめるような形になってしまいますが、データドリブンというのはまさにその通りです。
これまでのバイヤーの仕事は、あまりデータドリブンではなかったのかもしれないと感じています。かつての右肩上がりの時代においては、言葉が難しいですが、年〇% 原価低減よろしく、で自然に仕事が進められていたこともあったのかもしれません。
しかし、今は確実にそうではありません。ロジカルにデータに基づいて価格交渉をしていかないと、価格は下がっていかないのだと思います。では、購買部門にそうしたデータを活用しやすい環境があるかというと、ここは長年放置されてきた領域だと感じています。会社の基幹システムの中でも、開発、生産、営業といった部門のシステムは非常にしっかりしていますが、モノを買ってくるという、会社の外との繋がりを担う部分は、かなり時代遅れになってしまっています。そこをこれから加速度的に進めていかなければなりません。
非常にタフな道のりではありますが、そういった意味でデータドリブンな仕事に変えていきたい。そのためには、UPCYCLE のようなアプリケーションを使いながら環境を整備し、それを使いこなす人材も育てていく。この両輪で進めていきたいと考えています。特に AI が登場してからは業務支援システムの変化は非常に速いので、大きなパッケージシステムを導入するよりも、機能ごとに、その時々で良くて安いものを使い分けていく構成がベストではないでしょうか。その中の一つに、この UPCYCLE があると考えています。